第10番 やさしい花
4分の4拍子 ニ長調(#2つ)
<学習ポイント>アーティキュレーション、装飾音、レガート
好きな花を思い浮かべよう
やはりまずはなんと言っても曲のイメージ。お花可愛いですよね。私も大好きです。
この曲は聴いた感じはとても可憐なお花のイメージがあります。小ぶりのお花で花びらも薄く風にそよそよなびく感じ。
が、もし好きな花が熱帯に咲くラフレシアとか言われたら少しお話合いが必要かもしれません。
世界一巨大で臭い花
確かになんかちがうねぇ
題名から主観で想像するのが音楽の楽しいところですが、あまりにも作曲家の意図とかけ離れているだろうと判断した場合は
「作曲家が住んでる場所にはラフレシア咲いてないみたいだよ」
「いい匂いのするお花だと思うんだけどどう思う?」
などとお話が必要かなと思います。
はっきり言って子供は花自体にそれほど興味ないですけどね。
細かいアーティキュレーションがいっぱい
アーティキュレーションとは細かいスラーやスタッカートで曲に表情をつけることですが、最初から細かい指示がたくさんあります。
この4小節、実はⅠとⅤ7(属七)のたった二種類の和音が交互に出てきてるだけなんです。
こんなにシンプルなのに素敵なメロディーになっちゃってます。すごいね、ほんと。
1小節目はⅠの和音の「レファラ」がヒラヒラと花びらが舞うように上昇しています。
ヒラヒラの動きに細かいスラーやスタッカートをつけて生気を与えてあげましょう。このヒラヒラに生気を与えるか屍のようにしてしまうかどうかは演奏者の弾き方1つで決まります。
責任重大
そして3小節目の「この4小節の頂点」と書かれてあるところは最高音です。それを意識して大事に。
ここをきっかけに下降していきますから大事な箇所です。
2音間のスラーとスタッカートの弾き方
この曲の肝となる2音間のスラーとスタッカート。6番の後半でも同じようなものが出てきています。
1音目から2音目にかけて一息で。2音目は手首の力を抜いて軽く離します。音も2音目の方を弱く。
落として↓上げる↑落として↓上げる↑
言うのは簡単だけど、実際身につくまでにはかなり時間がかかるので根気強く続けていきましょう。
この奏法はかなり頻繁に出てきます。これからずーーーっと使います。一生使います。
料理で例えるなら、「包丁で具材を切る」くらい基礎的で奥が深いものです。
具材を大きさを揃えて切ると、火の通りも均一になるし見た目もいいし、包丁さばきが上手くなるともっと素敵に野菜も切れちゃいますよね。
下ごしらえってお料理の完成度に影響あるもんねぇ
2音間の単位は最小のものですが、この弾き方を身につけると「3音を一息」「4音を一息」にも繋がっていきます。
直近でいうなら11番の「せきれい」で既に3音を一息が沢山でてきます。
よくあるのがどうしても2音目に向かって音を離すので、2音目が大きくなってしまうこと。
しかも弾いている本人は気付きません。
スタッカートで音を離すので音の長さは短くなりますが、音量とは無関係。それが自分ではまだ聞き取れないことが多いです。
5~8小節目、スラーで一息
「指番号守れ」「がんばれ」しか言ってない図解
とにかくここは途切れることなくなめらかに。
どこか途中で息継ぎのように切れてしまうことがあるならそれは指番号が正しくない証拠です。
5小節目に入り始めると同時に7小節目の頂点を見据えて弾き始めること。音の高低に合わせて自然な抑揚をつけながら頂点のレに向かいます。
ここ抑揚つけずに平らに弾いちゃうとお経みたくなって聴いてて悲しくなります。少し大げさなくらいでまずやってみましょう。
例えばですが、風で空に向かってあおられた花びらがその後ヒラヒラゆっくり落ちてきて、フワっと地面に着地というイメージはどうでしょうか。
dimin. e poco riten. 段々弱く、そして少しゆっくり。
9~16小節目 転調
実は9小節目から転調(調が変わること)していますが、お気づきでしょうか。
生徒さんにも同じように質問していますが、
「いや?わかるわけないけど?」
みたいな顔されます。
「ヒントはね、ソに#がついてること。ファとドには調号がもともとついてるから#が3つある調だよ」
はい、答えはイ長調。どうせ答えてはもらえないんですけど、一応聞きます。
答えをすぐ教えて説明するのは簡単なのですが「3つ?なんだっけ?」とちょっと考えるのが大事なのです。
#3つイ長調
#3つイ長調
どうせ説明したって、何の引っ掛かりもなく右から左に華麗に通り抜けるだけなんで、それならちょっとくらい考えてもらった方が突起物ができるというものです。
ここの部分はニ長調の属調であるイ長調に転調しています。
このちょっとウザめのハート、見覚えあるでしょうか。この曲の冒頭の説明にもこのハートが出てきています。
ⅠーⅤ7ーⅠーⅤ7という構成が冒頭と一緒。
冒頭(1〜4小節目)の右手はレから始まり2オクターブ超えた音までの非常に広い音域の中で上がったり下がったりしています。
それに比べてこの転調した部分は使っている音域が狭いです。右手はドからラまでの6度の中で行ったり来たりを繰り返しています。
ゆらゆら
転調することによって音の華やかさは少し増すけど、音域が狭いことによって動きは少し控えめな印象になります。なんとも繊細ですね。
そしてこれを象徴するように、左手のアーティキュレーションにはスタッカートがついていません。
スタッカートの書き忘れじゃありません。
「あえて抑えている」と捉えるべきです。そうすると右手の美しいなめらかなメロディーとの相性もよくなります。
試しに左手の2音目にスタッカートをつけて弾いてみると違いがわかるでしょう。おそらくやりすぎ感を感じると思います。
13小節目の装飾音と転調部分の収め方
13小節目に装飾音が出てきます。ちっちゃい音符。
ここは装飾音符を抜かしてまず右手だけで弾いてみること。《ドミレド》《シレドシ》と弾いて何度も弾いてそのあと両手でも弾く。
装飾音符がない状態ならばそんなにむずかしくはないはずですし、リズムが崩れずに八分音符が弾けるはずです。
この13小節目は最初からリズム通りに弾かれることはまずありません。
なのでわからなくても弾けなくても練習してるのにできなくても落ち込まないで下さいね。
ささやかながらデータがあります。
13小節目のぴちち先生データ
- 1回目から弾ける人30人中1人
- 上記の練習を10回以上練習して出来るようになる人30人中15人
- やっぱりまだわからなくて再度同じ練習して出来る人、上記の残り15人中12人
- 一回できたのに翌週また元に戻っちゃう人30%
ここはメモ書きにあるような三連符のリズムになってしまうことがとても多いです。この違いがストンと腑に落ちるまでに多少期間はかかりますが、しつこくダメ出しを喰らいながらやっていけばちゃんとできるようになります。
ダメ出し必要なんだねぇ
自分じゃ判断出来ないことが多いから
13~14小節目を全体的に見てみよう
ついついむずかしい装飾音符だけにとらわれがちな13小節目。
注目するべきところはそこだけではありません。13~14小節目、そしてちょこっと15小節目の最初まで見てみましょう。
《ドミレド》《シレドシ》《ラミドラ》《ソミファソ》《ラソシラ》
赤字の音に注目です。音が1音ずつ降りてきていることに気がついたでしょうか。
メモ書きにもありますが、「ドーシーラーソーラー」という素敵な流れが見えますね?見えますね?
大事なことなので2回言います。
八分音符の細かい動きも大事ですが、それを1つの小さいピースとして、今度はそのピースを繋げてひくとまとまりのある演奏になります。
そうするとお経になりません。
この大きな「ドーシーラーソーラー」の流れを感じて弾けると、15〜16小節目の「dimin. e poco rall.」の弾き方も自然とわかってくるはずです。
自然となんてわからない・・
メモ書きに「余韻のように」って書いてるから
ここまでできたら残りは最初と同じ。
かといって最初と同じ気持ちではなく、物語が終わるという気持ちをもって最後まで丁寧に弾いて終えましょう。
最後の休符まできちんと意識して終えましょう。