第6番「進歩」
4分の4拍子・ハ長調(調号なし)
<学習ポイント> 10度の並行スケール(音階)・変則アクセント
またまたスケール(音階)の練習
この曲も5番「無邪気」同様、音階の練習です。
ただし、5番よりグレードアップしております。
5番の場合は、右手がスケールを弾く時は左手は和音を伸ばすだけなので、スケールに集中できましたが、6番の場合は「両手一緒にスケール」になっておりますのでスケールの難易度がアップしております。
速さもModerato(中庸に)からAllegro(速く)にアップ。
「一緒にスケール」の難しいところは指くぐりと指かぶせのタイミングが両手で違うところ。
これは両手一緒に「ドレミファソラシド」をやったことがある方ならこの難しさは感じたことがあるでしょう。
そして今回のこの6番は両手同じ音じゃないところが学習者の混乱を招きます。
よくある問題
両手のスケールが苦手
今現在この曲を勉強中の人で、「両手スケール全然平気!かんたん!」という人はそんなにいないと思います。
なんだかんだでひたすら練習するしかないのですが、その時にやみくもに何十回とやって「そのうち体と頭が覚えるわ」と、自然の流れに任せないで頭を使って練習した方がいいです。
そんなに自分の体と頭を信じてはいけません。
両手スケールの難しいところは先程も書きましたが「指くぐり」と「指かぶせ」のタイミングが両手が違うところなので、ここを徹底的に意識して練習します。
これは片手ではなく両手で練習。
ものすごーーくゆっくりやります。
そして指番号をブツブツ言いながら弾きます。この時はリズムどうでもいいです。
まずはやりやすい右手の指番号を「123・12345」と言いながら弾く(両手弾きながら)
次は左手を「54321・321」と言いながら弾く(やっぱり両手弾きながら)
この時、どんなにゆっくりでもいいんです。
次の音に行くまで明日になったっていい。その代わり次の音は両手とも決して間違えないように緊張感を持って1歩を踏み出してくださいね。
「次の1音間違えたら地雷を踏む」くらいの覚悟でやりましょう。
とにかく「今現在自分の両手の指は何の音を弾いているのか、次は何を弾くのか」ということを頭でハッキリわかるようにするのです。
実はこの練習、どんな場合でもこういう意識でやっておくと、かなり緊張対策になります。
特に本番なんかになると、嘘みたいに頭が冴えてしまい普段無意識で弾けていたところが、突然全部意識し始めてしまって何がなんだかわからなくなってしまうんですね。
普段のレッスンでも緊張してしまう方(素敵なことなんですよ)は、こういう「意識」の練習をいつもしてみて、先生の前でどれくらい効果があるか試してみて下さい。
変則アクセント
変則アクセント、という呼び方が正しいのかわかりませんが、音楽之友社の解説でこのような呼び方をしていたので便利だなと思いました。
この曲の最大の学習ポイントですね。
9小節目以降のことです。
この赤丸部分の弾き方がとても大事になります。
ドをしっかり弾いて、スタッカートのついているミの音を軽く離す。
この時、ミの音が大きくならないように。どうしても高い音に向かって弾くのでこのミが大きくなってしまうことがとても多いです。
しかもこのミ一つに「離す+スタッカート+弱く」という3つの要素に神経を使わないとならないので、実際鳴っている音がどうなっているかというのが自分では気づかないことが多いです。というか、もう聴くまでの余裕がないようです。
レッスン時に「いや、まだ大きいよ」と言ってもピンと来ない生徒さんは多く、たまにできることはあってもまぐれだったり、自覚がなかったりします。
あまり何度もやると「わからないことを言われ続けて嫌になる」状態になるので、あまり追い詰めないようにしています。
そして最後の段。
ありとあらゆることが起こります。右手だけならできた「スラー&スタッカート」もここにくると見事に崩壊します。
左手にもメロディーが出てきますからね。
右と左の音も合わなくなってきて今現在自分がどこで何やっているのかがわからなくなる状態になる子を何人も見ています。
ですので、ここがうまく弾けなくても落ち込まないでくださいね。ここは誰にとっても難しいのです。
図のように上下合う音に線をつけるとわかりやすくなります。
そして困難を超えたあとの最後の小節。これは「頂上まで登りきった。後はどうでもいい」感が満載で弾く子が多いです。急に速くなったり、全部f(強く)で弾いたり、ちっとも大切にしてくれません。
ここはクレッシェンドで盛り上がったあと自然に沈静化しながら、D.C.で最初に繋げるとても大切なところです。
こういう繋ぎは丁寧に。
全体の流れ
1〜4小節 この4小節はひとまとまり。1小節目より2小節目の方が音が3度高くなっているので明らかに「前に・上に」向かっています。なので特に2小節目のクレッシェンドは意識して3小節目に向かいます。3小節目のスタッカートは生き生きと。4小節目は3小節目のスタッカートに呼応するように。
5〜8小節 1〜4小節目とよく似ていますが、後半ちょっと変わりますね。特に8小節目のスケールは外に広がるようなイメージで。手も内側から外側に広がるのでイメージしやすいでしょう。
9〜12小節 ここから短調に転調。ハ長調→イ短調です。短調と言っても、そんなに暗い雰囲気はないので、あまり悲しい気持ちにならないでくださいね。f(強く)・スタッカート・アクセント(版による)という要素からもある程度の快活さを持って弾きましょう。
左右の手に同じ音型が出てきますので、アンバランスにならないように。
この4小節は和声の流れがとても綺麗です。和音の1番下の音がラ→レ→ソ→ドと、5度づつ下がっていってます。美しい。
13〜16小節 ここはp(弱く)からスタート。上記でも触れましたがかなり色んな要素が盛り込まれていて、複雑になっています。ここは左手の存在感も大事で、どっちの手がメロディーとかではなくどちらも大事。
左手はたっぷりとスラーで、右手は細かい動きがあります。どちらかの動きに釣られないように片手練習たくさんしましょう。