
弾かないのに演奏がレベルアップするって超お得!
ときどき人の演奏聴いていてこう思うことはありませんか?
「すごく難しい曲弾いてるわけじゃないのになんか素敵だな?」
「指がバリバリ動いて上手い、ってのとはなんか違うけど印象に残るピアノだな?」
とか。
大抵こういう演奏する子は「感性が優れているから」と言われることが多く、実際そのとおりだったりするのですが、じゃあ何が具体的に違うのかというと、いくつかある理由の1つに「間のとり方」があります。
「間」は弾くわけじゃないのに、演奏効果がアップする素晴らしいテクニックの1つです。弾かないのにテクニックといえるのか・・・と言われても困るのですが、私はテクニックだと思っています。
天性のものを持っている人はもちろんいますが、そうじゃなくても研究すればかなり変わります。
このように書くと、小手先の技でごまかすようなイメージを持たれるかもしれませんが、そうではありません。
なぜなら、「休符も音楽の1部なのよ!」とピアノの先生に言われたことがある方は多いとおもうのですが、間のとり方だって、曲の終わり方だって、なんなら曲が終わって音が無くなった瞬間だって音楽の1部だったりするわけです。

無音なのに音楽か
深いな
指がなかなか思うように動かすことができない人こそ、ぜひ間のとり方もよく考えて演奏するべきです。
もちろん簡単なことではありませんが、音を鳴らすこと、指を速く動かすことを必死で練習するように、音がない時間だって同じように大事に演奏するべきなのです。
例えば、たまに子供の発表会とかで、すごく易しい曲を弾いているのに、まるでピアノと一体となって歌うように弾いている子の演奏に出会うことはないでしょうか。
小さい子は乱暴な弾き方になる場合は多いのですが、その中でていねいに弾いてるいる子をみると「あら、すてきね」と思ったことはあると思います。
要は何が言いたいかというと、間のとり方、終わり方まで気をくばると、曲がどんなに易しかろうと音が少なかろうと素敵な演奏になるということなんです。
まずは曲の終わり方を勉強しよう
曲の途中で、場面が変わる時に一瞬ブレスをしたり、強弱を変えたりなどの変化をつけるのは結構むずかしいです。
なぜなら、次に弾く音符のことで頭がいっぱいになるからです。
なので私は「終わり方」に重点を置いてやっています。もうこれはどんなに小さな子でもレッスンでやっています。
曲によって終わり方は様々です。
ポイント
- 弱くしながら遅く終わる
- 消えるように終わる
- 音を切るようにキッパリ終わる
- 激しく余韻を残すように終わる
- 音が消えた後も余韻を自分で聴いてから離す
- わざと無機質に淡々と終わる
- 軽く消えるように終わる
ざっとこんな感じ。
曲のニュアンスに合わせて弾くと、もっとバリエーションはあります。
「遠くに行ってしまって見えなくなるように」
「力尽きてはかなく」
「華やかにオーケストラのように」とか、もうキリがないです。

星と一緒に夜空に消えて行く感じ
むずかしいって

なぜ私が終わり方にこだわるかというと、次の音がない分、音に集中できるからです。
そして曲に合わせた終わり方ができるようになると、曲の途中での場面の変わり目にも応用ができるようになってきます。
終わり方の具体例
曲によって色々な終わり方があると言いましたが、実際にはどんな感じなのか聴き比べてみてください。
ブルグミュラー25番の教材を使ってみます。
本当はもっと易しい曲でいいのですが、知名度があるのでわかりやすいかなと思いました。
種類が違う感じの終わり方のものを選んでみました。
1番 素直な心 | dim.e poco riten.の指示。だんだん弱く、そして少しだけ急に遅くするという意 曲が短いのであまり大袈裟に速度を落とさず、最後の1音に入る前くらいにゆっくりするのが自然な感じ。 動画ではちょっとやりすぎたかも(おい) |
2番 アラベスク | risoluto(決然と)の指示。 最後の音はフェルマータがついているので長く伸ばすものの、音の離し方は切るようにパッと。 |
7番 清い流れ | 特に速さの指示もなく、音量の指示もなし。 曲の雰囲気から考えると少し落ち着いて弱く終わるのが自然。 4拍目の休符もちゃんと感じてから終わること。 |
14番 シュタイヤー舞曲 | 特に指示はなし。アラベスクほど激しくは終わらないけど、スッキリ終わるのが自然。 ただ、曲の雰囲気・長さを考えると多少の「終わり感」が感じられるくらいの落ち着きで。 |
15番 バラード | 終わり方に特に気を付けたい曲。 最後の強い和音にデクレッシェンドがついていますが、伸ばしている音をコントロールするのは不可能。 よって自然と音が減衰しているのを聴いて感じながら拍通りに離す。 それから休符にフェルマータがついているので音を離した後もまだ自分では続きを聴くように。 |
19番 アヴェ・マリア | 最後4小節でdimin. e poco ritenuto の指示。1番と同じ。 この曲は最後の2小節を弾く前に曲自体は完結。 なのでこの場所に指示が出ている。 最後の2小節は修道女達が「アーメン」と厳か(おごそか)にささやいて終わるように |
24番 つばめ | dimin. と poco riten. が離れて書かれてある。 終わり方がむずかしい曲。 高音のソに向かって弱く弾く。 そのあとはおまけのように「はい、おしまい」と言わんばかりに軽やかに適度に速度を落として終わる。 軽さを残しつつ、急に速度を落としてppで終わるのはむずかしい。 |
こんな感じで終わり方1つとっても考えることは山ほどあります。
「終わりよけりゃ全てよし」とまでは言いませんが、終わり方をこれくらい徹底していつも考えて弾いていたら、必ず他の箇所にもいい影響は出てきます。
「弾く」だけじゃなく「離し方」も同じくらい大切に!