第7番 清らかな流れ
4分の4拍子 ト長調(#1つ)
<学習ポイント>親指を保持してメロディーを奏でる
右手で一人二役
なんといってもこの曲の最大のポイントは親指でメロディーを奏でること。そしてタイトル通りの川の流れのように美しく弾く、と。
メロディー部分とメロディーじゃない部分と弾き分けます。
冒頭の右手、こう思った方はいらっしゃるのではないでしょうか。


このように一つの音に対し、上下に棒がついている音符がありますが、つまりこういうことです。

合唱のようにピンクちゃんの歌うパート、水色ちゃんの歌うパートの音が重なった場合に上下の棒が付きます。
こういうのを「2声」と言います。
じゃあピアノではどう弾くのか、という話ですがこういう場合はメロディーの音を優先させます。
この2声の弾き方を学ぶのがこの7番の最大の目的です。加えて3連符。
まずはメロディーを探そう
どうしても最初の右手の複雑さ・むずかしさに気をとらわれてしまい、ひたすら冒頭から細かく練習をしてしまいがちです。
もちろんそれも大事なのですが、まず全体のメロディーはどうなっているのかを知っておきましょう。

右手のメロディーに印を付けました。上の画像を参考にした場合、水色ちゃんがこの曲のメロディーになります。
水色の丸に横に棒をつけたのは1の指を1拍分のばすからです。

こういう音を保持音(ほじおん)って言うらしいよ
むずかしい言葉よく知ってるねぇ

そんなわけで1の指で奏でる保持音だけで弾いてみます。できるだけギリギリ1拍の長さを保ちながら弾きます。
そうすると「シーシードーラーシーシーレーソー」とメロディーが浮かび上がってきます。これが大事。
そして水色ちゃんが歌い終わると、次は左手にメロディーが移ります。
左手は黄色ちゃんにでもしておきましょうか。


楽譜にも黄色ちゃん登場。
黒丸に棒がついただけの音符になると可愛く見えないかもしれませんが、慣れてくると音符が女の子に見えるようになってきます。
そうこうしているうちに一番下の段までいくとD.C.(ダ・カーポ)で最初に戻ります。
つまりこの曲は右手→左手→右手とメロディーが移動します。
メロディー弾きながら三連符
さて、1の指で1拍分保持しながらピンクちゃんの三連符を弾かなければなりません。
先程もいったようにメロディーは水色ちゃんなので水色の音は大きく、ピンクちゃんは小さく弾きます。

無理じゃね?
仕組みとしては頭では理解できるかと思いますが、じゃあ実際にやってみるといかにむずかしいかがよくわかると思います。
コツとしては手首を下げずに1の指を軸にしていい感じで重みがかかった瞬間にピンクちゃんの『ソレ』をフワッと弾けるポジションにして柔らかいタッチで『ソレ』を軽やかに弾き『シソレ』をひとまとめに弾く。手の内部で楕円を描くイメージで。
なんて文字で羅列したってできるわけがありません。
弾き方に関してはやはり実際に見るのが一番いいので、Youtubeを見るか、先生に教えてもらうのがいいと思います。
この部分に関しては、この曲を学習として進んできた段階で取り組んでいる場合、ちゃんとできる人は殆どいません。

えー。やる気なくすわ
とにかくまだ「修行中」です。一番大事なことは「あきらめないこと」。プロの演奏を聞くとびっくりするくらいメロディーが浮かび上がっていて、三連符も軽やかで綺麗ですよね。
びっくりして落ち込まないで、びっくりした後は憧れを持つようにポジティブに捉えましょう。
まさかの精神論


この曲に関しては動画いっぱいあるからいいの
ソーレーソーレーの左手
さて左手。
これは誰がどうみても

これ以外には考えられません。
というわけで、左手はなめらかに美しくやわらかく弾きましょう。
一番やりがちで、やってはいけないことが1の指が大きくなることです。つまり「レ」の音です。
ゴンゴン打ち付けてはいけません。バタバタもだめです。1と5の指で弾きますので割と弾きやすいためか乱暴になりがちです。
石を川に投げ込まないで下さい。優しく深く愛をもって弾きましょう。

抽象的
冒頭に「mormorand」(モルモランド)とありますがこれは「つぶやくように・ささやくように」という意味。

※画像は関係ありません。
左手メロディー
9〜16小節目までは左手メロディーです。黄色ちゃんが登場してる場面です。
そして私の生徒さん達は前半部分の右手保持音で十分苦労してるので、今度左手にメロディーが移りしかも右手のリズムがよくわかんないみたいなこの箇所にくると
「もう勘弁してくれ」
みたいな空気になります。

この右手、実は休符を含めた三連符なんです。
ちょっと書いておいてくれないとわかりませんよね。赤線のように書いておいてほしいです。3冊見比べて見ましたがどれも書いていません。謎。
「まぁ今までの流れでわかるだろう」ってことなんでしょうが、普通に8分休符・8分音符の数で数えるとおかしいんです。
なので慣れている人は三連符だっていうことはわかるんですが、初学者の人ほど「あれえ?」ってなるんじゃないのかな。
と、思いきやうちの生徒さんでこのことで質問してきた子は誰もいません。

前半で疲れ果ててるからそんな細かいことどうでもいい
とにかくここは三連符なので、休符が長すぎないようにしましょう。「ウン タタ」じゃなくて「ウタタ」です。
そして12小節目。
ここは左手のささやかな山場です。左手のメロディーの中でこの「レからソ」が一番大きな跳躍で、ソが最高音になります。素晴らしく美しい箇所です。
最高音を出した後はゆるやかに順番に音が一つづつおりていき、次の小節はpで始まります。なので書いていなくてもdim.で弾くとわかりますが、ちゃんと書いてくれているので「絶対に」守って下さい。

「俺の感性はちがう」とか聞き入れません。
川の流れですから、当然自然な抑揚があります。その自然な抑揚を表現するために、ちゃんとクレシェンドやディミヌエンドを書いてくれています。

音符と同じように言葉(楽語)も大事なんだねぇ
そしてこの8小節は右手の微妙な休符が持続せず、リズムを保って弾くのが精一杯で、抑揚をつけている心の余裕がないように思われます。
だんだんとリズムが崩れていき「あれえ?」と言っている間に最後の小節になります。

左手のメロディーが無くなり、いつのまにか右手のサラサラとした音だけが余韻のように聞こえてきます。
もうここは絶対にディミヌエンドして下さい。
ここをだんだん弱く弾かないと中間部の締めくくりにもならないし、D.C.で最初に戻るつなぎ目としてうまくつながりません。
そしてここは左手1拍しかないので長すぎないように。いつまでも音があると美しい右手の邪魔になります。

指はなすのってついつい忘れちゃうんだよねぇ
まとめ
全体でA-B-Aの形式になります。
Aの部分は全く同じですが、気分はちょっと変えます。
1回目のAは次にBが来るので続きがありますよね。気持ちが完全に終わらないように。
対して2回目のAはこれで曲が終わるので、1回目のAよりも最後の部分をちょびっとだけゆっくりすると終わりらしくなります。
ついつい夢中になって音符を追うことだけに夢中になると本来何を表現したい曲なのか見失うことがあります。
たまに川の素敵な景色を思い出して下さい。
そんな想い出がない場合は練習の前にお出かけして見に行って下さい。

ぴちち先生もレッスンで散歩いけ、とか言われてたもんねぇ