アラベスクとは
まず、「アラベスク」とはなんのことかというと建築様式や装飾に見られるアラビア風のデザインのことをいいます。
唐草模様とよく説明されますが、ただね、日本でその説明をされてしまうとこういうイメージが思い浮かびませんか?

これではブルグミュラーどころか、ドビュッシーもシューマンも泣きます。この二人も「アラベスク」というそれは素敵な曲を作っていますから。
ではどんな模様かというとこういう感じです。


音楽においては細かい音形の連続が、音を紡いでいくかのような曲調が特徴的です。
美しく、軽快に流れるように。
この曲のポイント
4分の2拍子。イ短調。
<学習ポイント>16分音符の粒を揃える。特に左手要練習。
「アラベスク」という題からもわかるように、この曲は16分音符を軽やかに流れよく弾くことがポイントとなります。
冒頭3小節目にもこんな楽語があるはずです。
「leggiero」(レッジェーロ)
これは「軽く」という意味なので軽く弾いて下さい。この楽語が出てくる場合は大抵速度も速い場合が多いです。
それからなんと言っても12小節目からの左手。
ここの16分音符を右手と同じクオリティで弾くことが最大の難関でしょう。
あとは左手の和音を軽く弾くこと。特に最初の「ラドミ」4つ。
よく生徒はここぞとばかりに張り切ってここ弾いちゃいます。
そのたびにこちらは
「盛り上がっているところ大変申し訳ないのですが」
という気持ちで訂正させていただいています。ここはp(弱く)なのです。最初からf(強く)で弾いてしまったらもう後が続きません。
弾く時に気をつけることと練習法
まずは冒頭の左手の和音。
これはp(弱く)でしかもスタッカートなので、弱くを気をつけるあまり音が抜けてしまうことがよくあります。特に5の指。
特に初学者の方はまだそんなに色々なことに意識がいかないのと指が出来上がっていないので、右手の「たららららん」が出てきたら途端にそちらの方に意識がいってしまい、かなり5の指の音抜けが多いです。
右手の16分音符を弾くことが重要視されてしまうこの曲ですが、もちろんそれも大事なのは言うまでもないのですが、左手をおろそかにするとかなりマヌケな演奏になります。
例えばプロのバンドなんかで、ボーカルとかギターとかすっごいうまいのに、なぜかドラムの人だけ風邪ひいてて調子悪くてしかもバスドラの調子も悪かったりして音が聞こえないとか、鳴らないとかでえらいムラがあったりしたら気になりませんか?


練習法としては、まず5の指だけで6小節分弾きましょう。6小節の間、ラの音がずっと支えますから大事なんです。
理想的なラでずっと続けられるようになってから、次に1の指のミとかファを付け加えます。
そうすると、5小節目で「おっ、和音の雰囲気が変わったな?」と感じることができます。
この間、ちゃんとラのクオリティは保っていてくださいね。耳でよーく聴いて下さい。
音抜けを防ぐためには、弱い音ばかりで弾いていても音が浮いてくるので、f(強く)でも必ず弾く練習をしましょう。
和音の変化を感じとることは何においても重要です。
和音の変化を感じられないということは、今暑いんだか寒いんだか、いい匂いなんだか臭いんだか、嬉しいのか悲しいのか私全然気にしません、ということと同じなんです。
そんな鈍感な人嫌じゃないですか?
リズム練習法
さて12小節目からの左手。
これは第1番の「素直な心」のときのようにリズム練習をすればいいのですが、音が少ないのでちょっとリズム練習しずらいですよね。そういう時は音を足してしまいましょう。
「ソ#ラシラソ」はまだなんとかなるとして、問題は「ラシドレミ」ですよね。
ここは「ラシドレミレドシラ」とか「ラシラシドシドシドレドレミレミレ」にして、連続で練習できるようにします。
おそらくこの練習でも
「きつい!他の指もめっちゃピコピコ動く!4の指あがらない!もう無理」と苦労する方は多いと思います。
そういう方は

来世に期待
とまではいかなくとも絶望せずに気長に取り組みましょう。
ムキになってやりすぎても手を痛めますから、痛くなる寸前ですぐやめてまた復活したらまたやる、を繰り返して下さい。
そして16~19小節目にかけてのこの4小節。グッときます。
ここだけで大事なことはこんなにあります。

実はまだある難関箇所
最後です。最後の3小節。跳躍です。

16分音符ばかり一生懸命やって、おっ結構弾けるなーと思っていたところ、最後の最後で大コケするパターンがとても多いです。
着地点ずれて、イ短調の和音で終われない、みたいな。
レッスンだと笑い話で終わりますが、これが本番ともなるとそうはいきません。
ここは速度が速いほど、難易度がグッと増してきます。
「いちかばちか」とかやめてくださいね?ちゃんと練習しましょう。
具体的にいうと跳躍というのは基本こんな感じになります。

こんな感じで跳躍というのは基本ちゃんと「目視」して移動します。
「レミファソラ」とか「ミレドシラ」の後に8分休符が入っているのはブルグミュラー先生の優しさです。ここで移動の時間が取れますから。
大事なのは見た場所に手が瞬時に移動し、ポジションを適切に捉えていること。
例えばレミファソラの後、グッと下に降りてミレドシラを弾くわけですが、この時最初のミだけ当たればいいわけではなく、「ミレドシラの鍵盤の上に両手が準備されていること」が大切です。
最後の表示risoluto(リソルート) これは「きっぱりと・決然と」という意味です。
パキっと弾いてカッコよく終わりましょう。
赤松林太郎さんの演奏。上記で言ったことが全て網羅されています。手元が見えるのでわかりやすいですね。
もう一つ反田恭平さんの演奏。音声だけです。最高の録音状態と最高のピアノでの最高の演奏。
もうこれは目指さなくていいレベルです。ひたすらウットリと聞き惚れましょう。