この曲の学習ポイント
この曲のテーマは「スラー」です。
このブルグミュラー25番の曲集の中で最も弾きやすいと言えるでしょう。
右手のスラーに集中しやすいように、左手の動きはそれほど複雑ではありません。
静かな和音でそっと支える感じ。
この曲は運指が両手とも「5321」のパターンが多く、音は違えど同じ動きをするので弾きやすいです。
ブルグミュラーさんの初学者に対する配慮が感じられます。
子供に「素直な心」という曲のイメージを聞いてもおそらくピンと来ないと思うので、あまりタイトルに関してはこだわって考えなくていいかなと思っています。

書いてある通りそのまま素直に弾けばいいんだね
好きに弾いていいってことね


ちがう
「書いてあるとおりに弾く」ということは、例えば上から下に降りる音形は自然にデクレシェンドしたり、メロディーと伴奏がはっきり分かれているようなこの曲の場合は伴奏を控えめにしたり、「楽譜から読み取れるそのままの情報」の通りに弾くことです。
音が飛び出ちゃったり、勝手な運指で弾くのはよくないです。
そもそもこの曲集、一応「練習曲」なので勝手な指番号で弾くと練習にならないよ!
速さについて
速さはAllegro Moderato となっています。
この曲集はメトロノーム表示が記されていますが、私はこの数字よりもAllegro Moderato という速度記号の方が大切だと考えています。
なぜならこちらの方がニュアンスが込められてますから。音楽ってあいまいなんです。
メトロノーム表示は一つの目安として参考にするのはいいですが、あまり厳密に捉えなくていいです。

これは2つの版の楽譜を比べたもの。
上の「音楽之友社」のものは♩=152(126~138)となっていますが、152という数字は元々の楽譜に記してあった速さです。
ただ速すぎるんですよね。
なので126~138くらいがちょうどいいんじゃない?と改定されたのだと思います。
さてさて、大切なAllegro Moderatoについてですが、速い(Allegro)と中庸な(Moderato)の間くらい。
おっ、この曲速いな!という印象を与えてもダメだし、まあ普通かぁの印象だけでもちょい足りない。
普通の歩みだけど、ちょっと前に進む感じ
くらい。やっぱりあいまい。
速度って難しくて、じゃあ表示通りの速度で弾ければなんでもいいのか、と言えばそうではないんです。
奏者がどう感じて弾いているか、聞き手にどういう印象を与えるのかというのがとても大事で、表示通りでも手一杯で白目剥きながら息も絶え絶えに汗吹き出しながら弾いてしまったら、聴く方だって手に汗握りながらドキドキしながら聴くわけで、この曲の「ゆったり優しく流れる感じ」という持ち味は伝わりませんよね。

人によって話す速さもちがうもんね。無理すると余裕なくなっちゃうもんね。
それならば126より落としてでもその子がゆったり気持ちよく弾ける速さで弾く方が演奏としてはいいわけです。
逆に

136?おそいわ
うさぎなんだから足速いの。スピード感もともとちがうから
という子だっています。
「遅くてつまんない」とちんたら歩いているとしか感じられないなら多少速度あげてもいいと思います。
先程も書きましたが、一応練習曲なので示された速度で弾くことを目標にはした方がいいですが、これが発表会などで人前で弾くときには「いい演奏」となるように自分の気持とフィットすることを心がけた方がいいでしょう。
弾く時に気をつけることと練習法
まず4小節をひとかたまりの文章として捉えるのは大前提として、っと。
単純な8分音符の羅列に見えると思いますが、自然な抑揚をつけながらムラなく弾くのは難しいです。
まずは右手がなめらかに弾けるようにとにかくリズム練習しましょう。

これは基本的なリズムパターンです。
①〜⑤は必須 ⑥と⑦はちょいむずかしめ ⑧は応用編
リズムが崩れる場合はそこが苦手な指の動きと認識して下さい。
このリズムパターンはどんな曲にでも一生使えます。もう頭に叩き込んでしまいましょう。
「あっ、指が動かない」=リズム練習
- 動かないと嘆く前にリズム練習
- めんどくさいなぁと考える前にリズム練習
このリズム練習はどれくらいやったらいいかというと、やればやるほどいいです。1つのリズムパターンにつき最低5〜10回を目安にするといいでしょう。

反田恭平さんもリズム練習いいってインスタライブで言ってたよ

リズム練習をたくさんして「自分の指がすごくなめらかに動くようになった!」という快感を是非味わってみて下さい!
ちなみに私が子供の頃はこの練習の①〜⑤を毎日10回づつくらいやってました。丸々1曲だとキツいですが、4小節単位くらいだとそれほど時間かからないですよ。
さて、次はこちらの右手13小節目です。とても大事なところ。

2分音符を伸ばしながら他の音を弾きます。この赤丸のソーとファーがメロディーです。
よくやってしまいがちなのが、ソーのばしてミーのばしてレーのばしてと「音をどんどん重ねちゃってる」という弾き方。
意外と自分では気が付きにくいのでここは自分の指を目でも確かめるようにしてください。


それからソミ♭レドはなんとかなるとして、次のファ#ミ♭レドの「ファ#ミ♭」が弾きにくい。指が「4→3」なので動かしにくいです。
ひたすらがんばれ!
ここでお困りの方はこんな練習もおすすめします。3と4の運指は動かしにくいのでやっておけばどんな曲にも役に立ちますよ。
次は左手
左手は和音が多いですが、ただ3つの音を適当に押せばいいわけではないです。バランスよく。
強い指が大きく飛び出しちゃったり、小指の大切なバスの音が聞こえなくなったり抜けてしまうのもだめです。
和音をバランスよく弾くのはどの曲を弾く上でも超絶大切なことなので、いつも意識していて下さい。
練習法としては、いきなり3つ弾くのではなく「5と1だけ」「5と3だけ」「3と1だけ」というように分けて弾いてみましょう。2つの音なら気をつけやすい。
特に1の指の方に手の重心がいくことが多いので気をつけて!

それから左手にも8分音符が出てきますが、右手の時と同じ様にリズム練習たっぷりやって下さい。特に左手は動かしにくいので右手よりも多めに。ここでガッツリやっておくと次の2番の「アラベスク」にも役に立ちます。
曲の最後に「dim.e poco riten.」とあります。
これは段々弱く、そして少し遅くという意味。
実は「段々おそくする」という意味の「riten.」は似たようなものが他にもあります。
- riten. ritenuto(リテヌート)の略。すぐに遅く
- rit. ritardando(リタルダンド)の略。だんだん遅く
- rall. rallentando(ラレンタンド)の略。だんだん遅く
ここで皆思うのが

ということなんですが、気になる方は申し訳ないですけどググって下さい。「リタルダンドとラレンタンドの違い」って。長すぎて書いてられないのですよ。
だいたいね「rがつくやつは段々おそくなるんだな!」って覚えてもらえるといいです。
というわけで、この曲の場合は最後にちょこっと「自転車のブレーキをかけるくらい」に遅くして終わって下さい。