大学時代のソルフェージュという授業での話。
その先生はよっちゃん(男)と言いました。
よっちゃんは大学のソルフェージュの先生です。
よっちゃんはピアノ科の私たち全員に向かってこう言いました。
「あんたたちさぁ〜、卒業したらきっとピアノの先生になるんだよねぇ?」
「あんたたちさぁ〜、自分の子供の頃と同じだと思って子供教えちゃだめだからねぇ?」
「子供なんて◯◯なんだからねぇ?「大きい」「小さい」「はやい」「おそい」の4つしかわからないからねぇ?」
(*◯◯は控えます。)
と言った言葉が今でも強烈に頭に残っています。
人に教えた経験が一度も無い私にはハッとさせられた言葉でした。
で、実際はそうだったりそうじゃなかったりしたわけですが、今思えばそれくらい極端な事を言っとかないと、我々不真面目な女子大生の耳には残らなかったわけです。
感謝してます。よっちゃん。
よっちゃんは私達ピアノ科の生徒にすごい人気の先生で教わる前から前評判が高くて私も楽しみにしていました。
もうね、最初のインパクトすごい。
肩くらいまで伸びたカールされた髪(多分くせ毛)を人差し指でくるくるしながら、話す訳なんです。
で、突然
「ヒャーッハー」とか奇声をあげてビクっとなってたんですが、やがて慣れました。
もう20年くらい前のことなんで細かい事は全然覚えてないんですが、よく馬鹿にして頂きました
あるピアノ実技試験の間近のソルフェージュの時間
一人一人目の前に「白紙の五線紙」が配られました。
「皆もう少しで試験でしょー
自分の弾く曲その目の前の五線紙に書いてみてよ」
一同「マジか・・・」という空気。
私に至ってはスクリャービンという作曲家名と、幻想曲Op.28(忘れもしない)までは書けるけど、調号が何個あったのかすら思い出せない・・
♯5個だったのか、6個だったのか、そもそも両方ト音記号だったのか、左手は違ったのかすら全然わからない。臨時記号が多すぎて、鍵盤では場所はわかるけどソの#なのかラの♭なのかわからない。
多分周りも、プロコフィエフとか、ラフマニノフとか、リストだとかなんだとかの難曲揃いで同じような状況だと思われました。
よっちゃんが私達のほぼ白紙の五線紙を一人一人覗き込んで
「みんな随分難しいの弾くんだねぇえ?
本当に弾けるの?
それで、書けもしないものを弾くわけ?
大丈夫?
あははははははははははははははは」
もう本当に気持ちがいいくらい馬鹿にされましてね、清々しいんですよ。
授業終了後、
「いやー、書けないもんだねぇ」「やばいよねー」なんて声が飛び交いましたが、別に気分を害した人もいませんでした。
実際ほんとのことしか言われてないですしね。
皆好きでしたね。
あの変な先生が。
卒業間近になってきた頃の授業で
「いいもんみせてあげる」とかいって、
ディズニーの「眠りの森の美女」を見せてくれました。
90分間ただそれ見ただけ。
今でもその映画を見るとよっちゃんを思い出します。