「発表会には出なくていいですか?」
これ、最近割と多いです。しかも発表会未経験の状態で習い始める時に質問されたりします。とりあえず「いいですよ」とは答えます。1年目は恥ずかしがって自信がなくて拒否していても案外2年目になるとすんなり出る事は多いからです。
ここで
「いえ、だめです。発表会は必ず参加していただきます」
とか、強気で答えた先生っているんでしょうか?だめです、って言われたら親は「じゃあここはやめます!」となるのか「は、はい・・わかりました・・・」と引き下がるんでしょうか。すっごく聞いてみたいです。
私個人的には
出なくてもいいけど、出た方がよい
です。
まだ知らない世界の未経験の事に子供の気持ちを尊重しすぎなくてもいいんじゃない?と思ったりします。
ピアノの発表会のメリット
張り合いがある。目標ができる。
まずこれがなんといっても一番だと思います。ピアノの練習ってすっごく地味で孤独なんです。学校だったら、九九でも頑張ったら「やった!クラスで一番速くいえた!」「ちっ、俺よりできるやつが二人もいるな。負けないぞゾ!」とか、日々小さな競争があって、勝ったり負けたりして嬉しかったり悔しかったりするわけですが、ピアノって黙々と家で練習して、週1の先生とのレッスンで披露するくらいなんです。
せいぜい年に一度の学芸会とか、中学・高校の「合唱コンクール」等で伴奏をして人の目に触れる事になるくらいでしょうか。
発表会はピアノ教室の最大のイベントです。
その最大のイベントに向かって練習をします。
泣いても飽きてもやります。前の日熱が出る子もいます。
これだけいうとただの苦行のようですが、この「人前で弾く」というプレッシャーの足枷が、普段やっている以上のレベルの曲を乗り越えるパワーになります。そしてうまく行った時の達成感、失敗した時の挫折感、どちらも大変意義のある事だと思います。頑張った分だけその度合いも大きいです。そしてこの一年に一度の経験を経ていく事によってどんどん上達していきます。
人前でたった一人で何も見ないで何かを披露するってすごく大変なことです。ピンとこない方はこういう事を想像してみてはいかがでしょうか。
20ページくらいのお話を全部覚えて人前で朗読する
ちょっと身震いしませんか?
おそらく数ヶ月は要すると思います。
暗記するだけでも大変なのに人前にたった一人で立ち、本番一度きり。暗記は勿論、ただ読むだけじゃ棒読みになるから表現を加える為に気持ちを作ったり、声に抑揚をつけたり、皆さんにはっきりと聞こえるように話す訓練をしたり・・が必要になってくるでしょう。
本番は緊張して声が震えるかもしれない、足が震えるかもしれない、暗記を忘れたらどうしよう・・・何百回練習しても不安だらけになるはずです。
これは全部ピアノに置き換える事ができます。
暗記=暗譜
表現=声の変わりに指、腕、全身を使って音に表情をつける
声が震える=指先が震える、腕が固まる。
これらを乗り越える為にはただ練習するだけでもだめで、録音で客観的に聞くことや、本番さながらの人前で弾く練習も必要です。
いつもはうまくいっていても、緊張すると予想もできないような事が起こります。
普段一度も間違わない所で間違ったり、音がすっぽぬけたり。ここで緊張した状態で自分がどうなるのか知り、そこでまた見直してさらに詰めていきます。
こういうことを小さい時から脳をフル回転させて子供達は経験するわけです。
努力の大切さを身を持って知り、頑張って成功する喜びもあるけど、失敗してしまう怖さ、厳しさも知ります。頑張った子ほど失敗すると悔しくて泣きます。当然です。
でもこれって子供の人生においてすごく価値のあることだと思いませんか?
ただ、本当にこういう精神状態に耐えきれず、発表会はもう無理です・・・となれば勿論尊重します。
やる前に諦めるのは賛同しかねますが、一度はやってみてほしいのです。案外やってみたらいいもんだった、となるかもしれません。運動会でも運動神経に自信のある子は楽しみだし、意欲も出ますが、運動が全く苦手なお子さんは人前で足が遅い自分を見られるのは苦痛でしょう。運動神経はそう簡単によくなるものでもないので、いくら走る練習をしてもいつもビリ・・となると劣等感を抱き、運動そのものが嫌いになるかもしれません。
うちの生徒でもピアノは上手ですが、運動は苦手なので「運動会は親もこなくていい」という子がいます。それでも学校行事は逃げられないのでいやいや参加しなければなりませんが、これはこれで嫌な事に対する耐性もつく、と思っています。そして自分は運動は苦手だけど、ピアノなら・・と自分の得意な方に努力を傾けていきます。
あと発表会のメリットは他の生徒の演奏も聴けるということです。
「◯◯ちゃんの弾いていた曲が素敵だった」「◯◯ちゃんみたくなりたい」
普段知らなかった曲に触れる機会にもなるし、モチベーションを保ったり上げたりすることにも繋がります。
先生がいくら上手にお手本を弾いても、お母さんがいくら練習しなさい、といっても
「上手な◯◯ちゃんの練習時間は毎日2時間」という事実を知り、その結果が目の前の演奏の結果となって現れたら「練習というのはこういうことか・・・」と実感します。
まさに百聞は一見に如かずです。
ですので、
発表会は参加した方が子供の為にはプラスになるけど、吐くくらい苦痛でマイナスにしかならないのなら出なくてもいい
と思っています。