ピアノを習うと頭が良くなると聞きますが本当ですか?
この言葉、私もよく聞きます。
大抵、本人ではなく、保護者であるお母様からの質問です。
おそらくここでいう「頭が良くなる」というのは「成績が上がる」ということを意味しているのではないかと思っています。
もちろん期待を込めて。
もしそういう意味でいうならば、頭が良くなるどうかは実のところ私にはわかりません。なぜなら成績が上がるのは色々な要素がありすぎるからです。
ただ
- 頭の働きが良くなる
- 集中力がつく
- マンツーマンで教わることに耐性がつく
などの効果は間違いなくあると思っています。
ピアノと脳の関係について書かれている本は最近では結構出ていて、なるほどなーと思うことはよくあります。
その中でも読みやすくて面白かったのが
「ピアニストの脳を科学する」
という本です。
この本は実験に基づいたデータや、医学的、化学的な根拠が丁寧に書かれてあります。幼少期の練習がなぜ大切なのか、何歳までの訓練がどれくらい必要なのか、大人になってからでも上達する理由は何か。などなど。
あらゆる疑問に必ずどこかに答えが書かれてあるような本です。
決してピアニストのようなレベルの高い人向けだけの本ではないということを付け加えておきます。
目次だけでも少し紹介します。
- ピアニストの指はなぜあれほど速く動くのか?
- ピアノの練習は脳をどう変化させるのか?
- 左右の手の独立性
- 耳と指をつなぐ特殊な回路
- ミスを予知する脳
- ミスを修正する脳
- 「良い耳」とは何か?
- 「良い耳」の育て方
- 音楽家の耳の特殊能力
- 楽譜を読むという能力
- 「暗譜」のメカニズム
- 初見演奏の秘密
- 手指の巧みな動きの秘密
- 超高速かつ高精度な打鍵を可能にするスキル
- 感動を生み出す演奏
- 音色を操る
- 音量を操る
- 音楽の微細な表情を操る
- 「感情を込めて演奏する」とは?
- 音楽に感動する脳
- 音楽を使った脳神経リハビリ・・・音楽療法の最前線
もう、目次だけで魅力的でしょう。
興味深い目次だけをピックアップしようと思ったら70%くらいを挙げてしまいました。
私なんかがこうやって記事を書くより、この本を読んじゃった方が早いのですが、とりあえずこれはこれとして。
私が日頃のレッスンで「頭のはたらきが良くなってるんだろうな」と思う理由は単純に目の前でその効果が出ているからです。
例えばこんなリズムをピアノレッスンの前にやったりするのですが、必ずしも全員がその場でできる訳ではありません。
全くできなさそうな場合は
「また来週挑戦!」とかになるのですが
「あともう一歩!」くらいの時はその場で何回かやらせます。
割と限界まで頑張ってもらいます。(ここ大事)
それでもやはり「あともう一歩!」のこともあり、できそうでできなかったりします。
ここまでくると、生徒の方もちょっと悔しくなってなんとか合格しようと意地になってなかなかやめません。
そういう時は
「あとでピアノ終わってからまたやろう。あとからだとできるようになるかもよ?」というとあっさり承諾します。
そしてピアノのレッスンの時に手を叩きながら歌わせて見たり、リズムを意識するようなものを取り入れながらレッスンをします。
ピアノを両手で弾くのはリズムよりむずかしいことをやるので、おそらくそれで脳が活性化するのか、
レッスン後に同じリズム練習をやると95%の確率で成功します。
そして2人で拍手なんかして、生徒はごきげんでその日を終えます。
生徒自身は
「さっきあんなにやってできなかったのに、なんでできるんだろう」と言いますが、
私は
「脳の働きが良くなったからだ」と勝手に解釈しています。
だってそれ以外に理由がみつからないんですもん。
そして先ほど書いた
「あとからだとできるようになるかもよ?」
が、ポイントでして、自分では理由はわからないのに「本当にできちゃった」場合、先生の株が上がるわけなんです。
(特にお母様がおどろく)
その時は
「ほらね、できたでしょ?」みたいな顔をしてやります。
株が上がるというか、「先生の言った通りになった」ということで生徒はよりこちらを信頼してくれるようになり、「先生のいう通りにやればできるようになる」と思い始めてきます。
自分1人では超えられない壁を、経験者がちょっと手助けしてその子が思っている以上の頑張りをさせることは大事です。
なので信頼してもらうこともとても大事なのです。
そうじゃないと限界まで頑張ってもらえないし。
先ほど書いた「ほらね、できたでしょ?」は本当は生徒の頑張りがあってこその結果なのですが、先生が生徒の手柄をとるというズルいことをやってます。
ある程度大きい子には理由を説明することもありますが、なんかそういうのもつまらないので小さい子にはそのままにしておいています。
夢があった方が楽しいし。
どうやら脳というのはすでに出来ることをやるよりも、出来ないことを出来るようにするために頭を使っている時こそ前頭葉が活発に活動するそうです。
脳を使った後は甘いものが欲しい・・・